2021 July

 

 
 
東京都美術館に「イサム・ノグチ 発見の道」展を見に行く。若くして出会ったブランクーシに影響を受け、自然と通底する抽象のフォルムが生み出す世界、独自の彫刻哲学を打ち立てたアーティストイサム・ノグチ。日本人の父と米国人の母、戦争によって両親の祖国が敵国になるという体験から平和への強い願いを持っていたノグチ。世界平和を目標とする祭典、東京オリンピックの記念展でもあるそう。

 

 
 
有名な提灯のような照明「あかり」はイサム・ノグチの名前を一般に知らしめた新しいタイプの彫刻。生前のビデオで本人が語って居られるように、彫刻は重くて移動できない上、高い。安価にアーティストの作品が普及する事をこの時代に考えた事にも驚くけれど、提灯という日本文化そのもののようなアイテムを彫刻にするという視点は今なお新鮮。子供の頃我が家にも幾つもあった「あかり」、照明の事を「イサム・ノグチ」と呼んでいた事を思い出す。

 

   
 
 
和光にて「光の芸術家」と称される写真家の故田原桂一氏の展覧会、「田原桂一 ルネッサンスコレクション」を拝見する。30年以上、パリを拠点に活躍され日仏で数々の賞に輝いた大御所でありながら、気さくなお人柄でお目に掛かる機会も多かった。ルーブル美術館所蔵の彫刻を撮影したモノクロ写真シリーズ「トルソー」の中から数点が最新技術でアクリル作品に生まれ変わり、新たな写真の鑑賞のスタイル。「和光ウォッチ&ジュエリースクエア」のリビングのような空間でゆったりと堪能できるのも素敵。

 

 

   
 
 
私の住むサンジェルマン・デ・プレはパリ6区。ワクチン接種のため久しぶりに訪れた区役所で頂いた様々な冊子、よく見て見ると実はマニアックなガイドブック。6区の知る人ぞ知る名所や公園内にあるアーティストの彫刻など、住んでいても知らない興味深い記事がたくさん。パリは本当に奥が深い・・・。

 

 

 
 
 
学生時代、パリに行く準備でいっぱいいっぱいの私に常にユーモアを持って優しく接して下さった哲学のI先生。卒業式で「お守りにね」と下さった九鬼周造の粋の構造。そのお言葉通りに飾っていた本を35年ぶりに開いて見てびっくり、先生の線書きを発見。「ここが大切ですよ」と解るように引いて下さったのだ・・・。「その時は解らなくても良い、いつかきっとわかる時が来る」、という先生のお言葉が蘇る。

 

 

   
 
 
パリに着いたばかり頃、帰国する方から頂いたたくさんの本。ネットもメールも無い当時、日本語の活字は貴重な読み物だった。その中にあったこの本、作曲家マーラーの妻に始まり数々のアーティストのミューズとして生きたアルマ、ヨーロッパ全土を舞台に繰り広げられる彼女の壮大な人生に思いを馳せる。

 

 

   
 
 
アトリエの大整理が続く中、マルセル・デユシャンの画集を久しぶりに開く。様々なコンセプトはさりげないけれど実に痛快、その生涯もさりげなく実に粋。外は酷暑、セミの大音響を聴きながら涼しいアトリエで見るデュシャンの作品・・・。

 

 

     
 
 
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